1. FCM (flow cytometry)を用いた胎児由来細胞の精製:全細胞集団中におけるY chromosome陽性細胞の割合(陽性率)を計測してみたところ、FCM sorting前における陽性率は9%であったものが、抗ウサギヒト絨毛細胞膜モノクローナル抗体(TM)を用いた場合では48.5%と約5倍の増幅、Glycophorin A (GA)+CD71モノクローナル抗体(CD71)を用いた場合では37.5%と約4倍の増幅が可能であった。 2. Magnetic beads (MB)を用いた胎児由来細胞の精製:(1) MB一段階による分離精製;TMを用いた場合では81.0%と約9倍の増幅が可能であったが、GAを用いた場合では26.0%で約2.9倍とこれはFCMを用いた場合よりやや成績の低下が認められた。このため我々は二段階分離精製法確立が必要と考え、以下の基礎実験をおこなった。(2) AIS+MB二段階分離精製法による細胞回収率の実験;まずCD45モノクローナル抗体陽性細胞をAISにて除去(CD45-)したところ、平均で88.2%の細胞が除去可能であった。さらにMBをもちいてGA陽性細胞の採取(GA+)を試みたところ、平均で3.93%の細胞を採取、すなわち平均で96.1%の必要ない細胞が除去可能であった。一方、MBのみを用いた二段階分離精製を行い、前者と比較してみたところ、第一段階除去過程(CD45-)では平均で77.3%の細胞が除去され、さらに(GA+)では平均で7.1%の細胞が採取、すなわち平均で92.9%の必要ない細胞が除去された。以上、精製率からみた場合の比較ではAIS+MBによる二段階精製法の方が有用であることが明らかとなった。 今後の課題:2.の結論からみてAIS+MBによる二段階精製法が有用であると思われた。我々はさらにAIS+MB精製法による陽性率をFCMによる方法と比較検討するため、胎盤絨毛間腔血液を用いた実験を進めている所である。
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