研究概要 |
皮膚表面には,いわゆるしわと言われている溝と,それ以外に,皮膚紋理を構成している小さな溝,すなわち皮溝が存在します。これらは,皮膚の切開線を設定する際に考慮が必要であると言われています。しわは加齢にともない増加傾向を示すのに対して,皮溝は指紋,掌紋と同様に不変であると言われています。このしわ及び皮溝に関する報告はいくつかなされていますが,これを定量化した詳細な報告はみあたりません。そこで今回は頭頸部の皮溝に注目し,性差,年齢差,部位差について比較検討を行ったところ,若干の興味ある知見が得られましたのでここにご報告いたします。 2次元的計測項目として,皮溝の密度,幅,方向性及びSpecific length(単位面積あたりの皮溝の長さの総和)に着眼し計測を行いました。被検者は,6歳保育園児,20歳学生,65歳以上老人とし,以下の5箇所から皮溝の印象採得を施しました。A:前額部中央,B:左右内眼角を結ぶ中点,C:右側外眼角外側,D:右側頬部中央,E:右側頸部中央。以上の5箇所から採取した資料を走査電顕にて撮影,画像解析装置CB-TASPERを用いて解析を行いました。 皮溝は部位により大きな違いがみられ,特に皮溝の密度及び方向性に関しては性差,年齢差もみられました。また,頬部中央においては全く皮溝の存在しないものも観察されました。 今後は,皮溝の3次元的計測(皮溝の深さ及び表面積など)を行い,皮下組織及び表情筋との相関関係を追求することにより,口腔外科領域における切開線の設定など,臨床的にも役立てたいと思います。
|