骨原性細胞塊を骨補填材として骨欠損部に移植することで新生骨を得ることができるかどうかを組織学的に検討するために実験を行った。骨原性細胞塊は、10週令のラットの頭頂骨を歯科用ラウンドバ-を用いて切削した1週後に骨窩洞内に増殖している細胞塊を用いた。この細胞塊はアルカリホスファターゼ(ALPase)活性が陽性になっていた。皮下結合組織の窩洞内への進入は、窩洞に蓋をするようにMillipore filter(φ1.2μm)を置く組織再生誘導法により排除することができた。 5週令同系ラット皮下結合組織内に移植後2週後に硬組織の形成は観察されなかった。骨膜内に移植した場合も同様だった。移植を行う時点で骨原性細胞塊のALPase活性は陽性なので、既に前骨芽細胞から骨芽細胞への分化段階にあると考えられるが、移植により環境が変化し脱分化し、骨芽細胞への分化からそれてしまったのかも知れない。また、この変化の原因として、周囲の骨組織から分泌されるBMPやTGF-βなどの因子がなくなること、或いは、骨原性細胞自身が分泌する因子が拡散することなどが考えられる。 そこで、もし、自身で何らかの骨誘導因子を分泌しているとしたら拡散しないようにしたら骨組織が誘導されるかどうかを調べるために、骨原性細胞をシリコンチューブ(内径0.5mm)に詰めて移植を行った。この状態は、臨床的にはClass IIIの根分岐部病変で分岐部に細胞塊を移植することに相当する。移植3週後にチューブ内は硬組織で満たされていた。しかし、組織学的に観察すると硬組織に接して骨芽細胞は観察されず、ALPase活性も陰性であった。このことから、形成された硬組織は異栄養性に変性または壊死した組織への異所性石灰化の可能性がある。ただし、コントロールとして皮下結合組織チューブに詰めて移植しても硬組織の形成は観察されなかったので、骨原性細胞塊に特有の性質であるのかも知れない。 この硬組織について、また、この硬組織が骨補填材として利用可能かどうか現在検索中である。
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