研究概要 |
本研究は新しいフッ化剤としてのフッ化ジアミンシリケート{SiF ; (NH_4)_2SiF_6}における作用機序を解明することを目的とし、SiFの構成成分であるケイ素の作用をモデル実験で検討したものである。NaF溶液にpH7.4に調整したNa_2SiO_3を0-25mmol/Lの濃度となるように添加し、フッ化剤とした。このフッ化剤に一定量のアパタイト粉末を懸濁し、pHスタットにてそのpHを7.4に保ち、一定時間アパタイト粉末を処理した。このように処理されたアパタイト粉末における形成物を定性定量する目的で、粉末X線回折法および、KOH抽出法(V.Caslavska,1975)により分析した。その結果、フルオロアパタイトの形成量は、Na_2SiO_3濃度とともに増大し、その濃度が10mmol/Lの場合に最大となった。NaFによるアパタイト粉末のフッ素化においては、フッ化カルシウムも形成するが、フッ化カルシウムの形成は逆にNa_2SiO_3の添加により抑制された。歯質の強化に与える影響をより直接的に検討するため、フッ素処理後のアパタイト粉末の結晶性を粉末X線回析のラインブロ-ソニング法で、また、酸性溶液に対する溶解性を測定した。その結果、フルオロアパタイトの形成量が最大であったアパタイト粉末において、結晶性が高く、また酸に対する溶解性が低いことがわかった。以上のことから、SiFにおけるアパタイトのフッ素化においては、ケイ素がフルオロアパタイト形成に対し、触媒的に作用している可能性が示唆された。
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