研究概要 |
計画書に提出した計画案を実施し、その成果を4つの論文に報告した。以下に概要をまとめる。 1)本合成計画の鍵となる含ハロゲンC4+Xユニットの立体選択合成に成功し、これより生合成類似の合成ルートにより9-Cl,Br,I-レチナ-ル誘導体を合成した。(C.P.B.1996) 2)1)で得られた結果をもとに、それに代わりうる相補的な9位修飾レチナ-ル誘導体合成ルートを開発し、これより9-F-レチナ-ル誘導体の合成を達成した。(Synlett 1995) 3)含ハロゲンレチナ-ル誘導体のタンパク機能解析ツールとしての評価をバクテリオロドプシンにおける再構成実験により行い、全ての誘導体が天然レチナ-ルと変わりなく取り扱える事を明らかにした。(C.P.B.1996, Synlett 1995) 4)上述の合成誘導体に加え、幾つかの9位修飾レチナ-ル誘導体を用いたバクテリオドプシンにおけるFTIRによる機能解析を進め、トリプトファン残基と9位メチル基との分子レベルでの相互作用仮説を裏付ける知見を得た。(Biochemistry 1995) 5)本合成研究において用いた、二酸化マンガンの穏和な酸化力に着目し、それがオキシムからカルボニル化合物への変換に有用であることを初めて明らかにした。(Tetrahedron Lett. 1995) (まとめ)研究目的の大半を達成すると共に、その合成研究の途中で新反応を見いだした。本研究では含ハロゲン誘導体のみならず多様な誘導体のデザインと合成が可能であり、未発表ながら現在進行中のタンパク質レベルでの研究結果も併せて、さらなる展開が今後期待できる。
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