研究概要 |
理研リングサイクロトロンで製造されるマルチトレーサーの特徴を生かし、動物や植物体内への種々の元素の取り込みとその代謝過程,体内分布、生理化学的機能について研究してきた。 現在、亜鉛欠乏症、糖尿病、急性アルコール症、Wilson病などの疾病モデル動物やビタミン、金属などの各種の化学物質を投与した動物の生体内における各種元素の様々な挙動や機能を同時に追跡してきた。さらにシダ植物における希土類元素の特異的濃縮機構についても研究を進めつつある。 今年度の研究により、亜鉛欠乏症ラットにおけるPtとIrなどの白金族に対する特異的結合蛋白質の単離精製を行ない、この蛋白質の生理的機能について検討した。また、肝臓障害を起こしているような疾病モデル動物における、希土類元素集積性とイオン半径との系統的な相関性を病理学、生化学、電気生理学的に解明できた。さらに、シダ植物群の希土類元素の特異的濃縮部位の特定と結合蛋白質の単離精製を試みた。本年度の研究は、マルチトレーサー法の有用性と限界を確認し、生化学、生理学、生物学の観点から実験を併せて行ない、生物無機化学分野のマルチトレーサー法の研究展開について革新的寄与ができた。 来年度から、マルチトレーサー法の新展開として宇宙などの極限環境中における生体微量元素のダイナミクスについて研究をスタートさせる。
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