児童・生徒の学校への不適応に対して、ある教師がよい解決方法を見つけ実践したとしても、それを他の教師が相互に役立てることは、あまりなされてこなかった。そこで、本研究では、学校相談事例をいろいろな教師が参照することができるように、データベースシステムの開発を目指したが、2つの基礎的課題を持って、研究を進めることにした。それは、 (1)プライバシー保護の方法 (2)各教師(一般教諭、養護教諭、学校カウンセラ-など)が必要とする情報の違いへの対応 である。(1)については、データベースとする以前の「カルテ」の段階では、どのように保護がなされているのか、さらにこれがデータベースとなった場合には、どのように個人情報を保護する必要があるかを、養護教諭を中心として調査を行い、その結果を分析した。また、同様に個人情報の保護が必要とされる分野として「医療」現場を考え、看護婦(士)に対しても同様の調査を行い、分析を行った。また、(2)については、学校不適応の児童・生徒に対する各教師の対応の違いを、調査によって分析した。(1)(2)の結果を踏まえて、システム開発を行ったが、情報をツリー形式にすることにより、単に情報を検索できるだけでなく、必要な項目の基となる事項や派生するであろう事項も比較して参照できるようにした。情報の保護は、伏せ字形式をとった。システムの試用は、これまで研究会などを通して、共同研究を行ってきた養護教諭を中心として、現在も継続中であるが、今後は、順次他の教師にも協力を呼びかけてシステムの拡大をはかっていきたい。さらに、こうしたデータベースをネットワーク上にのせた場合の情報保護形式のあり方についても検討を進めたい。
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