人間にとって使いやすい知的な計算機の構築には、一方的に入力される情報から自ら必要な情報のみを取り込む方式や、不足している情報が何であるかを予測し、置かれている環境に働きかけて獲得するような能動的な情報処理方式が不可欠であると考える。 本研究では、知的処理のための能動的な情報処理方式の解明・構築を目的として、その能動情報処理方式において重要な要素と考えられる実時間予測機構をニューラルネットの環境適応能力を用いて研究を行った。先ず、能動情報処理機械の置かれている環境であるが、一般に我々人間が接している実環境は、時事刻々と変化し、しかもそれらの間には時間的に相関のある時系列が形成されていると考えるのが自然であり、とすれば、この時系列から必要情報を獲得することが必要となる。本研究では、最も単純な系から研究を進める目的から一次元の時系列を情報処理機械が置かれている環境として設定した。この場合の情報処理は、ある時刻に出現する信号から次の時間に出現する信号との間の関数関係を獲得することであり、いわゆる関数学習と等価の問題となる。この関数学習において、トレーニングデータを無作為に用いた場合に目的の関数を獲得するまでに非常に多くの情報が必要であり効率が悪いが、本研究においてトレーニングデータを現在実現している関数と目的関数との違いに応じて、能動的(予め与えたソフトウェア的)に選択することによって収束時間の高速化が可能である結果を得た。また、これに加えて関数の特徴をも考慮したデータの選別、処理の追加で学習速度比で最大100倍程度の効率向上を予想させる結果を得ている。本研究において、能動的なデータ選別を自己組織的に獲得する機構の構築までは至っていないが、能動情報処理の有効性は十分示されたと考えられる。
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