一般に用いられている臨海状態モデルに基づく電流分布は、磁束量子が勾配を持って分布し、その結果得られると解釈できる。そこで、分子動力学的手法に基づいて、温度場が変化し磁束流・磁束クリープが存在する場合の磁束量子の分布を求め、その結果を基に温度変化を考慮することの可能なモデルを構築することに成功した。その結果、温度上昇時すなわち臨界電流密度が減少する場合には、従来の臨界状態モデルが適用可能であることが分かったが、逆の場合には、巨視的な電流密度の変化は現れず、電流密度が臨界電流密度より低くなり、臨界状態モデルが適用できないことが明かとなった。 次に新たに得られたモデルに基づいて、温度変化が存在し、磁束流・磁束クリープの影響を考慮した場合の巨視的な電流分布を、有限要素法に基づいた電磁場・熱場連成問題解析コードで評価した。すなわち、ヒステリシス損失・磁束流によるエネルギー損失等を求め、熱場解析の熱源として評価し、熱場解析を実施し、得られた温度分布に従い、臨界電流密度・磁束流による等価抵抗・物性値を変化させ、再び電磁場解析を実施した。従って、例えば温度上昇の場合には臨界電流密度が低下し、電磁場解析の結果、磁束流が発生し、更なる温度上昇をまねき、最終的にはクエンチに至るが、この変化の様子を数値解析によって詳細に評価し、クエンチが進展する時とクエンチからの回復が期待できる場合の境界である安定限界を求めた。この結果、印可磁場が比較的小さい場合には従来からの簡単なモデルによる安定限界とほぼ良い一致を示したが、核融合炉条件の強磁場下では、磁束流による発熱が局在化するため、安定限界が非常に低下することが、明らかとなった。
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