研究概要 |
水圏環境における農薬の間接光分解に関わる光増感物質の役割を明らかにすることを目的とし、太陽光近紫外線による除草剤の光分解に関する実験を行なった。供試農薬として我が国において使用量の多い代表的な水田除草剤3種類を用いた。各農薬および光増感物質を試験管中の純水に添加し、蛍光ブラックライトからの近紫外線を5日間照射した。esprocarbは直接光分解によってほぼ完全分解したが、dymron,mefenacetの光分解は認められなかった。一方、2%アセトンを加えた場合にはdymronは光分解し、mefenacetの光分解は認められなかった。このようにdymronが間接光分解を生じることが明らかとなったので、以後の実験では供試農薬としてdymronを供試した。 1995年3月から12月まで1ヵ月毎に採水した河川水をそれぞれ凍結乾燥により濃縮し、これにdymronを添加して近紫外線を15日間照射した。光分解は採水時期に関わらず認められ、多くの場合に濃縮河川水で顕著であった。特に4月および5月に採水した河川水における光分解が顕著であった。4月に採取した河川水のpHを4、6、8(pH無調節)、10に調節したところ、dymronの光分解はアルカリ側で顕著に認められた。同じ河川水を加熱処理しても光分解が生じたことから、光増感物質は熱に安定であると考えた。2種類の樹脂(活性炭,イオン交換)をそれぞれ通過させた河川水中では光分解が著しく抑制されたことから、光増感物質はこれらの樹脂に補足されたと考えられた。ゲル瀘渦によって河川水中の光増感物質を分取し、比較的低分子量のピークを有する画分に強い光増感作用を認めた。 このような間接光分解は水圏環境において普遍的に生じていると考えられ、今後はその反応機構を明らかにするために天然光増感物質の同定、さらに農薬の光分解産物に関する情報を得ることが急務である。
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