この研究は、現代都市景観と人間、とくに脳とのあいだの適合性を評価するための方法論を開発して、景観画像あるいは特定の光学的パラメータによるモデル画像等について評価をおこない、より人間に適合性の高い景観情報の抽出をめざすものである。今年度はおもに以下の研究を行った。 (1)静止画(スライド)をもちいた景観情報評価実験 電子メディアをもちいて近似的に景観情報を再現する手法として、スライドによる静止画呈示に着目し、スライドをもちいた景観情報評価実験手法の構築およびそれによる評価実験を行った。その結果、呈示する画像の精細度、幾何学性などのパラメータの違いが、脳波α波ポテンシャルに統計的に有意に反映することを見いだした。また、α波ポテンシャルの大小とシェッフェの一対比較法による心理実験との整合性が高いことも確認した。 (2)フィールド型脳波計測記録システムの開発と評価 実験室の中に電子的に再現された景観情報だけでなく、実在の環境に所在する被験者の生体情報を計測・記録し、実験室内で得られたデータと比較検討することはこの研究にとって重要である。そこで、屋外に所在する被験者を拘束することなくその脳波を計測・記録するシステムを開発した。このシステムは、ワゴン型の手押し車に、テレメトリ方式の脳波計、データレコーダ、電源(カ-バッテリ-)を登載し、外部からの電源供給を必要とせず、比較的自由に移動することができる。このシステムの有効性を確認するために、都市環境および自然環境のなかに被験者をおき、脳波計測をおこなって、景観をはじめとする環境情報のちがいに対応した生理的変化が脳波から抽出しうることを確認した。この知見をふまえて、より多様な環境で使用できるように、よりコンパクトで操作性のよい改良型システムの設計にも着手した。
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