ループ構造を安定化させる戦略として、(1)ループ構造のN末端とC末端の三次元的な位置を固定すること(2)部分的に逆平行βシート構造をとるようにアミノ酸配列を選択することを行った。オリゴペプチドのアミノ酸配列は、のちに化学反応性を付加するために、制限酵素EcoRI、EcoRVおよびFokIに共通してみられる、リン酸ジエステル結合の加水分解に関与していると考えられているループ構造部分に由来する25アミノ酸からなる配列を固相法により合成し、用いた。この25残基からなるペプチドは水溶液中ではランダムな構造をとっており、ループ構造を形成して、マグネシウムイオンと結合することはなかった。そこで、このアミノ酸配列のN末端側とC末端側に逆平行βシート構造をとるようにアミノ酸配列を付加した。この14アミノ酸からなる配列はCroタンパク質の二量体形成部位に由来し、二量体形成は各々の単量体のC末端部分での逆平行β-シート形成ならびにフェニルアラニン残基がもう一方の単量体のN末端部分で形成される疎水性ポケットに取り込まれることにより安定化されている。この二量体形成機構をもとにして、Croタンパク質のC末端部分のアミノ酸配列を持ち、N末端部分のアミノ酸で形成される疎水性ポケットのかわりにゲスト包接能を持つシロデキストリン分子をもつ14アミノ酸残基からなるオリゴペプチドを合成したところ、分子間では二量体が形成されることがわかった。今後、この14アミノ酸を付加したループペプチドの溶液構造を調べる予定である。
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