発生初期の鶏胚脊髄の最背側部に於て、これ迄に報告されていないタイプの細胞死が起こることを報告した。 本研究において、表皮をニワトリ胚脊髄背側部に異所性に移植することによりこの細胞死の量を有意に増加させることが確認されたので、脊髄の背側に位置する表皮が脊髄最背側部で起こる細胞死を誘導する分子を産生している可能性が示唆された。この細胞死は、表皮中に存在するTGF-βスーパーファミリーのbone morphogenetic protein(BMP)サブファミリーに属する分子によって誘導されるという仮説のもと、この分子の遺伝子をrversetranscriptase polymerase chain reaction(RT-PCR)を用いて単離することを試みた。しかしながらこの実験計画の進行中、脊髄背側部の表皮中にBMP-4とBMP-7が存在することが新たに報告されたため、遺伝子の単離に先立ちBMP-2ヒトリコンビナントプロテインを用いて、BMPファミリーに属する分子の脊髄最背側部で起こる細胞死に対する影響をin vivoで検討した。その結果、脊髄の最背側部の形態形成に異常が起き、この異常が起きた領域内で細胞死の量が有意に増えることが確認された。現在BMPサブファミリーの分子の発生初期ニワトリ胚における局在をin situ hybridizationを用いて調べている。 又、細胞死に関連するタンパク質であるinterluekin-1 β converting enzyme(ICE)の働きを阻害する合成ペプチドの、この脊髄で起こる細胞死への影響を調べた。このペプチドは、脊髄運動ニューロンで起こる自然細胞死は抑制するが、初期に起こる細胞死には影響し無いことが明らかになり、この結果はNeuron誌に掲載された。
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