研究概要 |
生体組織である骨が,絶えず自らを成長・吸収させることにより,機能を維持・回復し,力学的環境の変化に対して機能的に適応する能力を有していることは広く認められている.しかしながら,そのメカニズムについては未知な点が多く残されており,その詳細を解明し理解することは医学臨床分野のみならず工学分野への応用が期待されている.本研究では,まず組織の局所での挙動を駆動する組織間の相互作用や相対的力学因子を考慮し,組織内に分布する応力やひずみと骨の力学的再構築を関係付ける巨視的数理モデルの提案を行った.次に,骨梁構造やハバース管などの骨の微視構造レベルにおける骨芽細胞・破骨細胞等の活動に影響を及ぼす力学的因子として,微視構造内部あるいは表面における応力やひずみを取りあげ,微視構造レベルでの力学的再構築の微視的数理モデルの提案を行った.さらに,微視構造,階層構造を有する骨構造の力学のための連続体的取扱いの各種手法の検討により,微視的構造と巨視的構造とを関係付け,巨視的な力学的境界条件と微視構造レベルでの力学状態を対応づけることが可能なモデルの検討を行った.また,それを用いたシミュレーションにより再構築による微視構造変化と骨全体構造としての再構築との関連について検討を行った.得られた結果を実験・観察結果と比較することにより,提案した骨の力学的再構築モデルの妥当性が確認された.さらに,変動する力学的環境に対して時間的・空間的な最適性をもたらす自然状態分布を積極的に利用する最適残留応力配置決定問題や,物質の出入りをともなう物体の最適質量分布決定問題としての構造最適設計への応用について検討を行いその有効性を確認した.
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