研究概要 |
研究実施期間の5ケ月間、a東京オリンピックのナショナルな統合に関する検討、b植民地朝鮮におけるスポーツを通した統制・同和動向の検証、c朝鮮人の運動会、体育・スポーツイベントを通した抵抗ナショナリズムの検討を行ってきた。 課題aに関しては、高度成長期のただ中で開催された東京オリンピックが、国民統合の強力な装置であったことを検証し、戦後日本のナショナルな民国統合にとってオリンピックという国際的スポーツイベントがきわめて重要な役割を果たしていたことを、当時の資料検討にもとづいてあきらかにすることができた。 課題b,cに関しては、朝鮮総督府学務局などの史料にもとづき、同化政策が謳われていたにもかかわらず、現実には植民地朝鮮における体育政策が兵式体操を中心とし、日本人と朝鮮人との競技が禁止されていたこと、「教練」が抵抗の温床になるとして行われなかったことなど、植民地統制の一環としての性格を帯びていたことを確認した。また、そうした統制政策に抵抗して植民地下においても民族主義体育の運動が継続していたこともあわせてあきらかになった。 戦前と戦後のスポーツ・ナショナリズムには言うまでもなく性格の相違が看取されるが、スポーツ史にそくした検証をつうじ、スポーツイベントを手段とする国民統合の継承・連続と断絶という両様の位相をあきらかにする展望が開けてくる。上記の研究をつうじて、日本における近現代スポーツ・ナショナリズムのそうした位相を解明する有益な手がかりをえることができた。
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