研究概要 |
真菌の二次代謝物の化学構造は非常に多様であり,真菌毒の場合,こうした毒を産生する遺伝子群のほとんどは,aflatoxinとsterigmatocystinを除いて,それらのゲノム上では同定されていない状況である.そこで本研究では,Aspergillus/fumigatusにフォーカスして研究を進め,平成20年度は以下の成果を得た. 1.A.fumigatusゲノムを中心として,二次代謝物の合成に関与している遺伝子群を同定するためのバイオインフォマティクス技術をこれまで開発してきたが,この方式の有効性をデータを用いて検証しながら,このソフトウェアを改良した. 2.A.fumigatusの熱適応のシステムを解明するために,温度を30℃から37℃,そして48℃へと上げた時の,時系列遺伝子発現データに状態空間モデルを適用して,転写ネットワークシステムの解析を行った.まず,ヒートショックタンパク質遺伝子の発現は,TCAサイクルや炭水化物代謝系などの中心的な代謝系遺伝子とは強い負の関連があることがわかった.さらに,推定した転写制御ネットワーク構造を解析すると,ヒートショック下で適応していく遺伝子制御ネットワークは,コヒーレントなフィードフォワード制御によって代謝系遺伝子を制御していることが判明し,このような制御構造は,ヒートショック下でのA.fumigatusの温度適応に有利であることが示唆された.この解析にはソフトウェアツールCell Illustrator及び関連するソフトウェアを用いた.これらの成果は,次の論文として投稿中である:"Do,J.H.,R.Yamaguchi,Miyano,S.Exploring temporal transcription regulation structure of Aspergillus fumigatus in heat shock by state space model".
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