研究概要 |
甲状腺ホルモンであるトリヨードチロニンは脊椎動物の組織の成長,発達,代謝に重要な役割を担っている。甲状腺ホルモンはヒトの発毛やニワトリ羽毛の発育にも関与するが,メカニズムの詳細は明らかではない。ニワトリの換羽は短日条件で見られることから,本研究では,羽毛幹細胞であるケラチノサイト幹細胞の分化における甲状腺ホルモンと時計の関係について解析を行った。甲状腺ホルモン応答エレメントとE-boxの塩基配列の3連結を合成してpGL3に構築した。ケラチノサイト幹細胞の分化誘導にはT3/Ca2+の添加により行い,甲状腺ホルモン応答エレメントおよびE-box-pGL3をケラチノサイト幹細胞に導入しそれぞれの転写活性をモニターした。トリヨードチロニンおよびCa2+の単独添加では甲状腺ホルモン応答エレメントおよびE-boxの活性は殆ど変化しないが,その両方の添加では有意な活性増加が認められた。甲状腺ホルモン応答エレメント活性はトリヨードチロニン/Ca2+添加の約5h後に小さな増加があり、さらに約24h後に活性増加が見られた。トリヨードチロニン/Ca2+添加によるE-box活性増加は15h後および4~5日後に認められた。以上,ケラチノサイト幹細胞の分化過程ではトリヨードチロニン/Ca2+処理がCLOCK-BMAL1の転写活性の増加をもたらし,甲状腺ホルモン活性の増加が続くことを示している。
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