研究概要 |
ライフサイクルアセスメント(LCA)は製品のライフサイクルにおける環境影響を予測・評価するための1つのフレームワークである。本研究では従来のLCAに比べてより現実的な状況を反映したConsequential LCA(CLCA)を提案した。一方,技術的革新がマイクロスケールからナノスケールに展開されており,なかでも電子機器産業ではナノ技術の革新が進んでいる。今後広く普及する新技術についての環境問題について予見することは非常にメリットが大きく,本研究ではナノ技術にCLCAを適用し環境影響の評価を進めてきた。 使用段階におけるエネルギー消費量の削減効果とナノ粒子の排出による影響のトレードオフが想定される,DRAMとMRAMおよびLCDパネルとFEDパネルの2つのケースを事例として選定し,日本の代表的な影響評価手法であるLIMEを組み込んだダイナミックCLCAの適用を試みた。ケーススタディーを通じてDRAMとMRAMの比較においては電力消費量が重要なファクターとなり得ることが示唆された。ナノ技術の専門家とのディスカッションによりDRAMとMRAMの比較だけでなく,将来的な競合関係からFeRAMとMRAMの比較が重要であることが明らかとなった。LCDパネルとFEDパネルの比較については,従来型のLCAに基づいて行われたスクリーニング評価などの既存評価事例の調査を進め,今後のCLCA適用に向けた準備を行ってきた。 本研究成果はライフサイクル影響評価に関する書籍の一部として執筆作業が進められており,また複数の論文で参考文献として紹介されており,世界的にも関心の高いものとなっている。
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