研究概要 |
本研究課題は当初セルオートマトンにおける観測及び記述の理論の構築を目標としていたが、今年度ではセルオートマトンに研究範囲を限定することなく様々な方向へと発展させていった。第一に、(Haruna2008,Ecological Complexity)では、生態系フローネットワークにおいて局所的な不均衡を定義し、成長可能な均衡化過程の数理モデルを考案した。さらに、局所的な不均衡の定義を用いてフローネットワークの局所的な相互情報量を定義し、データ解析も行った。第二に、(Haruna2008,Artificial Life XI)では、生物ネットワークの局所構造の代数的記述と量子計算の代数的記述の形式的類似性を指摘し、情報の流れに関する一般的な視点の存在を示唆した。第三に、潜在性の一つの表現という視点から、rough setに関する研究を行った(Haruna2009,Rough Set and Knowlede Technology)。Rough set theoryにおける下近似、上近似は立相空間論における内点、閉包の類似であるが、内点をとる位相と閉包をとる位相が異なる場合に相当する系をrough setにおいて考え、圏論を用いた解析を行った。第四に、化学反応系の連続・確率的記述と離散・確率的記述のギャップを定量的に評価する方法及び両者を繋ぐ理論を提案した。簡単な具体例を用いて解析を行った結果、定常解ては両者の間に定性的な差はないが、時間変動までみれば両者の振舞いが大きく異なる場合があることが判明した。
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