研究概要 |
研究目的の一つである「ナノ構造物質における励起子の緩和過程の包括的な理解」を目指し,本年度の前半は,特に励起子の輻射緩和に関する解析を行った.その結果,約20年前から議論されてきた励起子の輻射緩和速度の結晶サイズ依存性に関する包括的な理解が得られ,閉じ込め系からバルク系への移り変わりの条件を明確に導くことに成功した.この成果は,ナノ構造物質における励起子の非線形過程および,そのデバイスへの応用を議論していく上で,物質を設計する際の一つの指針となるものと考えている.その成果は国内学会・国際会議で報告しており,学術雑誌にも掲載予定である. 本年度の後半は,研究目的の一つである「有限系における光の量子性まで考慮できる非線形光学理論」の開発を目指し,有限系における励起子・光相互作用を繰り込んだ励起子相関関数の解析表式の導出を目指した.その結果,解析表式の良い近似式を導くことに成功し,非線形過程さらには緩和理論を将来議論する際に必要になると考えられる,詳細な摂動理論への道を示すことができた.この成果に関しても国内の学会にて報告している. また,昨年度までに開難がほぼ完了していた「任意構造における励起子に対する量子電磁力学理論」に関しても,動揺散逸理論との対応など,これまでよりも詳細な解釈をすることに成功し,将来の非線形・緩和過程を議論する上での,理論的な基礎を築くことに成功した.この結果は昨年度までの成果を含んだ形で学術雑誌において掲載された.
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