研究概要 |
土壌・地下水中に遍在するコロイド粒子が,低溶解性の汚染物質のキャリアーとして作用するコロイド促進輸送のメカニズムを明らかにする基礎的観点から,モデル実験系を用いて,自然界の主要なコロイド成分であるフミン酸の移動特性を解析した. ガラスビーズ充填カラムを通過するフミン酸がコロイド的な移行挙動を示す溶液化学的な条件(酸性条件下,一価塩(NaClで0.1mol/L以上,二価塩(CaCl2)で0.001mol/L以上)を昨年度までに絞り込んだ.本年度は,得られた条件のもとでガラスビーズ充填を用いたカラム実験を実施し,フミン酸のモデル土壌内での移行に対するイオン強度の影響をコロイド化学的な観点から解析した.その結果,NaCl条件下では,0.1mol/LからNaCl濃度が上昇するにしたがって,フミン酸のカラム流出率は減少し,0.7mol/L以上ではそれ以上の減少は確認されなかった.CaCl2条件下でも同様に,塩濃度の上昇にともなって,流出率は減少したが,0.008mol/L以上では変化が見られなかった.流出率から計算されるコロイド安定性の指標である衝突係数と塩濃度の関係性を求めた結果,実験条件下においては,フミン酸の移行挙動がコロイド安定性に基づいていることを示された.当初予定された火山灰土壌中でのフミン酸の移行に関する研究は,火山灰土壌の表面荷電特性を明らかにするまでにとどまり,フミン酸のカラム通過実験は実施されなかった. これらの研究成果は,国際会議第5回「環境汚染におけるコロイド界面現象と界面科学の取り組み」,そのポストセミナー「環境中のコロイドと界面」,および「第14回地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会」で発表された.
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