研究概要 |
本研究では事業所サービス業の「東京一極集中」について,経営コンサルティングサービスを事例に検討してきた.昨年度に引き続き本年度も,経営コンサルタント企業の形成と展開(事例地域:東京都港区),公的機関によるサービス供給(事例地域:山梨県)の2側面から調査研究を行った.本年度は,2つの事例地域における事業所立地及びサービス需給関係の地域的基盤に着目した分析を行った.また,経営コンサルタント業史を把握するために文献及び資料収集を行った.さらに,公的機関による経営コンサルティングサービスの展開を把握するために,戦後からの中小企業政策に関する文献及び資料収集を行った.その結果,現代日本における経営コンサルティングサービスは「民間主導型サービス供給システム」と,「公民連携型サービス供給システム」が混在する形で発展してきたことが明らかとなった.民間システムの場合,起業型事業所と分社型事業所による企業形成とその成長であり,その立地展開や事業展開は,事業所設立主体とそのプロセスに依存していた.公民連携型システムの場合,公的機関によるサービス供給と,公的機関とビジネスサービス業者との連携の2つのサービス供給形態があり,これらの供給範囲は行政界や経済圏に規定されていた.両システムにおける事業所立地は,交通の利便性によって顧客への近接性が確保される地域や地点が重要な立地選択要因となっていた.以上のことから,サービス供給者の在り方の違いや,地域との関わり方が,日本における経営コンサルティングサービスの地域的差異として,つまりは「東京一極集中」として帰結しているものと考えられる.なお,これらの研究成果の一部は,機関誌『経済地理学年報』にて近日,公表予定である.また,研究成果の公表には至っていないが,これら2つの事例についての英語論文を執筆しており,Geographical Review of Japanへの投稿準備を進めている.
|