研究概要 |
研究代表者は世界に先駆けてRGMaが中枢神経軸索再生阻害のmain playerであることを突き止め、開発したRGMaに対する中和抗体(抗RGMa抗体)をラットの脊髄損傷モデルに投与することによって有意な機能回復と軸索再生が促されることを見出した(Hata K. et. al., J. Cell. Biol.,2006)。 このことによって従来まで不可能とされていた中枢神経軸索の再生治療に道が開かれた。しかし、中枢神経の十分な機能回復を期待するならば、軸索伸長を促すだけでは不十分である。すなわち、再生軸索が適切な二次ニューロンに投射して神経シナプス形成を達成して機能的な神経路を形成しなくてはならない。この問題は中枢神経の再生医療にとって極めて重要な課題であるにもかかわらず、現時点ではその概念すら登場しておらず、その研究は全く行われていない。そこで申請者は再生軸索の神経シナプス形成のメカニズムを解析したいと考えている。 研究代表者はまず、中枢神経軸索再生阻害因子であるRGMが再生線維に及ぼす影響について研究を始めた。その結果、損傷後の脊髄においてRGM中和抗体を投与した群では、損傷部よりも頭側でのsproutingや損傷部よりも尾側でのsproutingが促進されていることが分かった。また、損傷部よりも頭側/尾側でのシナプス形成率を計測した結果、RGM中和抗体投与群ではシナプス形成率が高いことが示された。これらのことから、中枢神経には生理的にシナプス形成を阻害する機構が備わっており、RGMもその役目を果たすことが示唆された。本研究は、Brain Res.(1186,74-86)に発表され、大きな反響を得ている。
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