研究概要 |
本年度は、固体表面における光散乱測定のために、動的光散乱手法そのものの高精度、高感度化開発を行った。その際、測定対象として気体を用いた。それにより装置の性能評価がしやすくなるだけでなく、今まで手つかずの状態であった気体の低周波数域における熱フォノン研究が行えるようになった。 はじめに低角光散乱における集光方式を新たに開発した。それにより、感度を失わずに熱フォノンスペクトルの測定誤差を減らすことに成功し、前方散乱においてピーク測定精度の向上、幅の定量的議論が可能となった。開発した動的光散乱装置を用いて、従来観察が十分に行われてこなかった、分子緩和による熱フォノン伝搬の変調を捉えた。 さらにでは、上記で開発した動的光散乱手法をより改良することで、freon23,freon22ガスにおける並進-振動緩和によって熱フォノンピーク(ブリュアンピーク)の一部が、ゼロ周波数にピークをもつローレンツ型のモード(カップリングモード)として現れることを確認した。また、スペクトルを動的構造因子でフィッティングすることでえ緩和強度を求め、それらが熱フォノン分散から得られる値と一致することを確認した。ここで、熱フォノン測定または音波測定では、圧力又は測定周波数を変化させることではじめて緩和情報を得ることができるが、一方、カップリングモードスペクトルひとつからは、緩和情報を完全に得ることができる。そこで、各圧力下における緩和周波数、緩和強度をカップリングモードスペクトルから測定したところ、理想気体状態から明確なずれが現れる高圧においても、緩和定数は低圧下における値と一致することを確かめた。音波測定や熱フォノン測定では緩和定数の圧力変化を測定することができないため、このカップリングモード測定は、気体の緩和を詳細に知るための有力な手法と考えられる。
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