研究概要 |
導波路型アイソレータは、他の導波路ベースの光素子(レーザ等)との一体化が容易であることから、次世代の光集積回路において必須なものの1つとされ、近年、各研究機関で盛んに取り上げられている。本研究では、磁気光学効果の一種である非相反損失を利用することによって、上記素子を開発することを目的としている。以下、研究の実施状況について概要を述べる。 非相反損失とは、ある条件のもとで前進波と後退波の伝搬損失が互いに異なる現象である。これを利用してアイソレータ動作を得るために、半導体光増幅器の上部に強磁性金属を配置した素子を提案した。本素子の強磁性金属を一軸方向に磁化させておくことで、素子内の前進波と後進波の有効屈折率に違いが生じ、前進波の損失よりも後退波の損失が大きくなる(横磁気Kerr効果の影響による)。ここで、前進波の損失分を、半導体光増幅器で補うことにより、後退波に対してのみ損失を生じる(消光をもつ)素子を実現できる。 これまでの研究から、1.5μm帯において適切な特性を得るためには、強磁性体であるMnX系材料(X=As,Bi,Sb)を使用することが適切であることが認められた。よって、本研究では強磁性金属としてMnAs,MnSbに焦点を当ててきた。実際には、(1)理論計算、(2)MOVPEによる半導体光増幅器の成長、(3)MBEによる化合物半導体上へのMnAs,MnSbエピタキシャル成長およびその薄膜評価、(4)素子の作製・測定という流れで研究を進めてきた。
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