研究概要 |
1)学術論文については,性同一性障害に関する総説論文の公刊と行動遺伝学に関する投稿論文が受理されるという成果が得られた。性同一性障害の総説論文は,雑誌「臨床心理学」に性同一性障害の臨床に携わる心理臨床家のための臨床プロトコルを示したものであるが,性同一性障害臨床の流れを紹介した論文はこれまで皆無であった。行動遺伝学に関する論文は,性役割パーソナリティの個人差に及ぼす要因が男女で遺伝的に環境的に異なるのか否かを明らかにした論文である。"ジェンダー"における生物学的要因と心理社会的要因との分離は不可能であると言われてきたことから,画期的な論文であるといえる。また,わが国ではまだ双生児法についての邦論文の公刊は少ないため,我が国最大の心理学系学術雑誌である「心理学研究」に掲載が決まったことは意義深い。 2)学会発表については,北京で開催された国際学会で1本の口頭発表を行っている。その様子は,性の健康医学財団ニューズレターである「性の健康」の8号第2巻にて報告した。国内学会では,2つのシンポジウムで話題提供を行い,一つでは性同一性障害/トランスジェンダーの多様性を紹介し,もう一つでは性同一性障害傾向の遺伝と環境の影響の発達的変化を示した。また,性同一性障害当事者における,ジェンダー・アイデンティティに影響を及ぼすストレスコーピングスタイルについて,日本心理臨床学会で口頭発表をしたところ,その後,発表内容を論文にするよう「心理臨床学研究」の編集委員会から推薦を受けた。
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