研究概要 |
架橋アゾベンゼン液晶高分子(CLCP)フィルムは紫外光照射によりメソゲンの配向方向に沿って異方的に変形し,可視光照射または熱により初期の形状に復元する。このため,CLCPフィルムはアクチュエーターとしての応用が期待できる。これまでにわれわれは,CLCPフィルムの光屈伸挙動こつい検討し,前年度において,架橋部位の光応答性の有無が動作特性に大きな影響を及ぼすことを明らかにした。 本年度はフィルム内部のアゾベンゼンの異性化率をFischer法により算出し,アゾベンゼンの導入位置および濃度の光異性化への影響と,力学的特性への寄与を評価した。その結果,アゾベンゼン濃度が低下するにつれて異性化率が増大することが明らかとなった。また,アゾベンゼン濃度が一定の系において異性化率および発生応力を測定したところ,異性化率では,アゾベンゼンを側鎖に多く含む系において高い値を示す一方,発生応力では,架橋部にアゾベンゼンを多く含む系で高い値を示すことが明らかとなつた。 続いて,高い発生応力を示したフィルムを用いて応用性を検討した。その結果,フィルムは照射のみで自重の100倍以上の重量を有する物体をもちあげ,自重の1,000倍近くの重量を有する台車を移動できることが明らかとなった。さらに,太陽光よりフィルターを用いて紫外光と可視光を取り出し,CLCPフィルムに照射したところ,自然光のみで屈伸運動を誘起できることもらかとなった。 以上の結果より,アゾベンゼンの濃度および導入位置を調節することにより,高効率な光運動材料を得られることが明らかとなった。
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