我々はアンチモンの表層環境での挙動、とくに様々な酸化還元環境での水-土壌分配挙動を明らかにしてきた。これまでの研究から、アンチモン(Sb)は土壌中の水酸化鉄に取り込まれること、還元的環境では溶出しやすいヒ素とは異なりSbは固相に吸着しやすいことがわかっている。この結果のうち、還元的環境で、Sbがより固相に分配されることは未解明か知見であり、更なる研究が必要であった。 本年度は還元環境下でのSbの挙動を明らかにするために、還元能を有する鉄水酸化物鉱物green rustによるアンチモンの還元実験を行なった。 その結果、green rustはSb(V)に対し還元能をもち天然環境中でSbの還元剤となり得ることがわかった。また、green rustとSbの相互作用について以下のような知見が得られた、(i)Sb(V)はgreen rustと内圏型と外圏型の両方の吸着錯体を生成する、(ii)そのうち内圏型の吸着錯体が主要な錯体種である、(iii)Sb(V)の内圏吸着錯体によって準安定相であるgreen rustの安定性が上昇する。この研究成果は環境化学分野のリーディング雑誌であるEnvironmental Science&Technoiogy誌に掲載が決定している。 またアンチモンと還元剤との相互作用だけではなく、還元環境下でのアンチモンの固液分配挙動を明らかにするため、バクテリアを用いて室内実験系をスタンフォード大学のScott Fendorf研究室で習得した。
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