研究概要 |
(1)網膜幹細胞におけるWntシグナルの解析 前年度の研究成果からWntシグナルは哺乳類網膜幹細胞において分化抑制的な機能を持っていることが示唆された。本年度、DNAマイクロアレイを用いて作成したSSEA1陽性未熟辺縁部網膜前駆細胞における遺伝子発現データベースよりWntシグナル関連遺伝子の解析を行い、id family遺伝子に着目し発現制御、機能解析を行った。その結果、GSK-3b阻害剤BIOを用いてWntシグナルの活性化を行うことで網膜前駆細胞におけるid3遺伝子の発現が誘導された。またin situ hybridizationによる発現解析をしたところ網膜辺縁部の未熟網膜前躯細胞でid3の発現が強く認められ、id3遺伝子の過剰発現によりSSEA-1陽性未熟辺縁部網膜前駆細胞を一過性に維持できることが認められた。以上よりid3遺伝子は網膜前駆細胞におけるWntシグナルの標的遺伝子であり、Wntシグナルはこのid3遺伝子の発現を介してSSEA1陽性の網膜前駆細胞の分化抑制に寄与していることが考えられる。 (2)Chx10遺伝子の網膜幹細胞特異的発現制御領域と上流因子の決定 昨年度、Chx10遺伝子網膜幹細胞特異的制御領域結合タンパク質を質量分析にて解析を行い上流因子の候補としてNPM1を同定した。今年度、NPM1遺伝子の発現の解析を行った結果、Zebrafish,Mouse網膜発生過程及び、CMZの網膜幹細胞で強く発現していることを確認した。またNPM遺伝子はChx10遺伝子網膜幹細胞エンハンサーの配列を介してDNA結合ドメイン依存的にLucレポーター遺伝子の活性化をすることからNPM1によるChx10遺伝子の発現制御による網膜幹細胞の維持機構の存在が示唆された。
|