研究課題
特別研究員奨励費
ヒトの小腸に発現しているABCG2は生体異物の体内侵入を阻止する防御システムの1つである。植物性クロロフィルの代謝物フェオフォルバイドaが小腸から吸収されて血液循環系に侵入すると光線過敏症の症状を引き起こすが、正常人ではABCG2がその侵入に対する防御機能を果たしている。フェオフォルバイドaとABCG2を阻害する化合物とを同時に摂取した場合、光線過敏症のリスクが高まると考えられる。本研究では、ABCG2と光線過敏症の因果関係の解明と光線過敏症のリスクを予測するシステムの確立を目的としている。初年度は、ABCG2の輸送阻害スクリーニング系及び光毒性アッセイ系の確立を行い、2年目は、この評価系を用いて様々な化合物・薬物を試験し、ABCG2の阻害に関与する化合物・薬物に共通する化学構造因子を見出した。3年目となる当該年度は、ABCG2と光線過敏症の因果関係について、臨床レベルでの解明を目的として研究を行った。ABCG2と光線過敏症の因果関係を臨床的に解明する手始めとして、遺伝性ポルフィリン症患者とその家族のABCG2 cDNAのシークエンス解析に焦点を絞った。前年度に、ABCG2 cDNAのシークエンス解析のためのプライマーのデザイン、シークエンス条件の検討を行い、ABCG2 cDNAの増幅、シークエンス解析に最適なプライマーを設計した。本年度は、これらのプライマーを用いて、遺伝性ポルフィリン症患者とその家族のABCG2 cDNAのシークエンス解析を行った。解析の結果、臨床サンプルの中で、ABCG2タンパク質の発現量が野生型の約半分に低下する一塩基多型(SNP ; single nucleotide polymorphism)を発見した。このポルフィリン症患者では、ポルフィリンの排出を担うABCG2タンパク質の存在量が野生型に比べ有意に減少しているために、重篤なポルフィリン症を引き起こしたと推測される。今後、この患者のゲノムを用いて更なる確証を得る必要があるが、遺伝性ポルフィリン症の発症や症状の重篤度の個人差の一因としてABCG2の遺伝子多型が関与している可能性を裏付ける結果となった。
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