配分額 *注記 |
3,300千円 (直接経費: 3,300千円)
2009年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2008年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2007年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
|
研究概要 |
前年度のドイツ・ハンブルク大学の渡航から引き続き「貝形虫類の背甲縁辺部の殻形成」をテーマに研究を行い,当研究員のこれまでの研究成果にLeptocythere lacertosaを主な素材とした電子顕微鏡を用いた微細構造のデータを加味することで,ポドコーパ目貝形虫類の背甲縁辺部に発達する分類学的・解剖学的に重要な器官である毛細管(radial pore canal)や前庭(vestibule)の形成過程を解明した.電子顕微鏡観察の結果から,脱皮直後において成体の背甲は,幼体と全く同じ様式で石灰化が行われるが,さらに時間が経過すると,縁辺部の折り返し部分が石灰化を開始することが示唆された.すなわち,ポドコーパ目貝形虫の成体において,背甲クチクラ層の石灰化は2つの段階を経て進行することが明らかになった.また,この折り返し構造に発達する毛細管の分岐パターンは,L.lacertosaでは脱皮後100時間しても確認されず,それ以上の時間が経過した個体にのみ,様々な発達具合の毛細管分岐パターンを確認することができた.この研究成果は,オランダの国際学術誌「Hydrobiologia」に受理され,2010年1月に出版された.さらに,当研究員は前年度に国際学術誌「Zoological Science」に,北海道厚岸湾より産出した貝形虫2種を新種として提唱・記載した論文を投稿・受理され,2010年3月に出版された.本研究では,これまで背甲形質によってのみ分類されることの多かった貝形虫Semicytherura属の現生種を記載しており,本属の分類・系統進化を考える上で重要となる軟体部・付属肢の形質を網羅的に図示・記載している.それらの情報を基礎として,今回提唱した新種2種とその類縁種群の日本近海における種分化について議論した.本属には現生種以上に化石種が多く存在する.今後本属の現生種の記載が進むにつれ,化石種から得られる分類学的情報も増え,日本近海におけるメイオファウナの分散・種分化について地質年代スケールの議論を行うことができると考えている.
|