本研究は、イランの首都テヘランの宗教実践を事例として、イスラームとジェンダーの関係性を検証するものである。今年度は、前年度に引き続き、女性の性質、役割、義務、位置付けなどに関するペルシャ語の文献の分析、およびイランのジェンダーに関する先行研究の検証を進めた。 また、12月下旬から約3週間、イランの首都・テヘランにおいてフィールドワークを実施した。イラン人の家庭に滞在し、日常生活を共にしながら宗教実践への参与観察や、家族の成員らへのインタビューを行った。特に調査の時期は、イランが国教とする12イマーム・シーア派の第3代イマームであるホセインが西暦680年にカルバラーで殺害されたこと哀悼する儀礼が行われるヒジュラ暦モハラム月が始まったところであり、今回のフィールドワークでは、この哀悼儀礼への関与に関して、男女によってどのような違いがあるのかに焦点を当てた。方法としては、モハラム月1目から哀悼儀礼がピークを迎える10日までの間の、滞在先の家族およびその親族の成員の行動について、誰とどこでどのように過ごしたかについてインタビューを行い、記録した。これにより、モハラム月に行われる様々な哀悼儀礼への関与に関して、男女という性別による違いだけでなく、世代による違いもあること、その違いは男性間の方が大きいことが明らかとなった。また、モハラム月の哀悼儀礼と親族間の紐帯が密接に関連していることも明らかとなった。帰国後は、これまでの研究成果をまとめ、博士論文の執筆を進めている。
|