研究課題
特別研究員奨励費
酸素原子を有するドナー分子の合成は難易度が高く、詳細な物性研究がなされていないケースが多い。Fabreらによって報告されている(DMEDO-TTF)_2PF_6は130K付近で一次の構造相転移を示すが、室温の構造、転移後の構造、伝導挙動の詳細は明らかにされていない。本研究課題ではこの物質の130Kにおける相転移を調べる目的で結晶構造と伝導挙動を明らかにした。(DMEDO-TTF)_2PF_6の構造は(EDO-TTF)_2PF_6とほぼ同型であり、(TMTSF)_2X類似の構造である。ドナー分子はhead-to-tailでa軸方向に積層し、ab面に伝導面を形成している。室温の結晶構造解析に基づいて強結合近似法により計算したこの物質のバンド構造とフェルミ面から、この物質が積層方向に擬一次元的な電子系を有することが明らかになった。伝導シートに対し平行に測定した抵抗は室温から金属的な挙動を示すが、伝導シートに対し垂直に測定した場合半導体的な振る舞いを示す。同様の現象は(TMTSF)_2PF_6で報告されており、この物質がバンド計算の結果通り強い一次元性を有することを示している。いずれの方向でも約130Kで抵抗の飛びを伴った急激な転移がみられ。転移温度以下でも金属的挙動は保持されるが、約50Kで金属-絶縁体転移を示す。130K付近の転移は温度履歴(130-195K)があり、また冷却速度に依存した過冷却がみられることから一次の金属-金属転移であると考えられる。130K付近の転移およびこの物質の基底状態を調べるため無配向試料についてSQUIDによる磁化率の測定を行った。磁化率は温度の低下に伴い徐々に減少するが、142Kから上昇し130Kで極大になりその後パウリ常磁性的な振る舞いを示す。抵抗測定と同じように磁化率でも温度履歴が観測され温度範囲(130-195K)もよく一致している。一方、金属-絶縁体転移温度50Kでは磁化率の減少がみられ、この物質の基底状態は非磁性の絶縁相であることが明らかになった。
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