研究概要 |
本年度は、昨年見出された抗JH活性物質KF-38の構造活性相関およびKF-38がカイコ体液中の昆虫ホルモンに与える影響を検討した。 KF-38のクロメン環を様々な含酸素複素環に構造改変を行ったところ、クロメンだけでなく、二重結合を有さないクロマン環や1,4-ベンゾジオキサン環でも高い抗JH活性を示したのに対して、酸素原子とジメチル基を反転したイソクロマン環や酸素原子を有さないテトラリン環では活性が消失もしくは大幅に低下した。このことから、活性にはベンゼン環に直結した酸素原子の存在が重要であること、またKF-38の活性は同じくクロメン環を有する抗JH活性物質であるプレコセンとも異なる作用メカニズムを有していることが明らかになった。 さらにKF-38を処理した際のカイコ体液中の昆虫ホルモン濃度をLC-MSおよびLC-MS/MSを用いて測定したところ、KF-38はJHI濃度を消失させたのに対して、20-E濃度には影響を与えなかった。このことからKF-38はJHの生合成を抑制もしくは代謝を促進することによって早熟変態を誘導することが明らかになった。
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