研究課題
特別研究員奨励費
東京湾における底棲魚介類群集の資源量と種組成の経年変動を明らかにするために、1977~1995年および2003~2008年に行われた底曳網漁獲調査のデータを解析した。1980年代中期までは、シャコ、ハタタテヌメリ、マコガレイを中心に資源量が増加した。しかし、1980年代末に多くの魚種の資源量が同調的に急減し、1990年代も低水準で推移した。2000年代には大型魚類(スズキ、板鰓類)が顕著に増加したが、その他の魚種の資源量は依然として低水準であった。資源量と環境因子の変動傾向を判別分析により解析した結果、資源量は溶存酸素濃度、水温、降水量、動物プランクトン豊度と同調して変化することが示唆された。以上の結果は、環境変化が湾内の生態系へ影響を及ぼし、その結果として底棲魚介類の種組成および資源量が同調して変化したことを示唆する。東京湾におけるマクロベントス群集の生物量と種組成の時空間的変化を明らかにするために、2006年4月から2007年3月にかけて毎月1回、東京湾全域に設定した10定点においてマクロベントス採集を実施した。同時にCTDデータ、水および泥の試料も採取した。クラスター解析の結果、調査定点はマクロベントスの種組成、生物相の違いにもとづく4水域(湾奥部、湾中央部、湾南西部、湾南東部)に区分された。湾奥部、湾中央部、湾南西部においては、底質は泥質であり、底泥中の強熱減量、TOC、TN、TSは高かった。湾奥部および湾中央部では生物量と多様度は低く、スピオ類(Prionospio pulchra, Paraprionospio patiens, Paraprionospio coora)、クシカギゴカイSigambra sp.などの多毛類およびシズクガイTheora fragilisが優占していた。湾南東部は砂質で強熱減量、TOC、TN、TSは低かった。種組成は湾奥部・湾中央部に類似したが、生物量は多かった。湾南東部においては、生物量、多様度はともに高く、ラスバンマメガニPinnixa rathbuniや端脚類などの甲殻類の生物量も多かった。季節変化においては、夏期の湾奥~湾中央部において、底層の貧酸素水塊の形成の影響により、無生物域が観測された。秋に貧酸素水塊が解消したことにともない、同水域においてスピオ類、クシカギゴカイ、シズクガイなどの幼若個体の新規加入がみられた。以上の結果は、貧酸素水塊が底棲魚介類の主要餌料であるマクロベントス群集の消長に甚大な影響を与えていることを示唆する。
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