研究概要 |
化石燃料の燃焼に伴って副生する二酸化炭素を利用することは省資源の点で意義がある.しかし,遷移金属化合物による二酸化炭素の触媒的C-C結合生成反応の例は多くなく,しばしば基質の制約がある.従って広範な基質に適用できる新しい触媒系の開発が望まれる.私はC-H,C-C,C-S結合を切断し二酸化炭素によりアルコキシカルボニル化する反応を開発することを考えた. C-H,C-S結合の触媒的切断反応として脂肪族α-チオケトンのα-メチルチオ化反応を開発した.(2R*,4S*)-4-t-ブチル-2-フェニルチオシクロヘキサノンとp-シアノフェニルα-メチルチオメチルケトンをロジウムヒドリド触媒存在下反応させると(2R*,4S*)-4-t-ブチル-2-フェニルチオ-2-メチルチオシクロヘキサノンおよびp-シアノフェニルアセトフェノンを収率良く与えた.逆反応が進行すること,(2R*,4S*)-4-t-ブチル-2-フェニルチオシクロヘキサノンの当量を増やすと収率が向上することからC-H,C-S結合の触媒的切断反応が平衡反応であることを確認した.また(2S*,4S*)-4-t-ブチル-2-フェニルチオシクロヘキサノンとp-シアノフェニルα-メチルチオメチルケトンをロジウム触媒存在下反応させると(2R*4S*)-4-t-ブチル-2-フェニルチオシクロヘキサノンを用いた場合とほぼ同じ結果を与えたこと,および(2R*,4S*)-4-t-ブチル-2-フェニルチオシクロヘキサノンをロジウム触媒と反応させると40%が(2S*,4S*)-4-t-ブチル-2-フェニルチオシクロヘキサノンに異性化することからケトンα-位C-S結合がロジウム触媒により可逆的に切断されることがわかった.C-S結合をロジウム触媒で切断したロジウム中間体と二酸化炭素を反応させることを試みたが,アルコキシカルボニル化は進行しなかった.
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