弦理論におけるタキオンの重力への影響を理解に向けて、ブラック・ストリング時空における閉弦のタキオンについて、1)Near Horizon Limitでの弦理論的な解析2)タキオン凝縮の結果得られるバブル解(bubble of nothing)の古典的安定性について研究を行ってきた。 1)現段階ではホライズンのある時空上で弦を議論するのは困難である。そこで、Near Horizon Limitをとることによりブラック・ストリング時空上にタキオニックな閉弦が存在できるかを検証した。特に、F1-NS5ブラック・ストリングの場合、Near Horizon Limitは3時次元アンチ・ド・ジッター時空と3次元球の積となり、それ上のNS fluxの入った弦理論はよく定式化されている。適切な表現を選び出し、超対称性を破るような境界条件を課したフェルミオニックな閉弦にタキオンが存在することを確認した。 2)数学的にはバブル解はブラック・ストリング解から解析接続をすることによって実現される。ブラック・ストリングから得られるバブル解は静的であり、特にブック・ストリングに2つチャージを入れた場合は時空の最終状態としてふさわしい解を作ることが可能となる。しかし、一般にブラック・ストリングはGregory-Laflamme不安定性があり、バブル解も同様の不安定性があると予想される。そこで、私は静的バブル解の安定性をInitial dataを用いて解析した。具体的にはバブルの表面積の加速度をGeodesic Deviation方程式を使うことで評価した。その結果、閉弦の凝縮の結果得られたバブル解はパラメータの選び方によって安定に存在できることがわかった。しかし、これはバブル解だけでの議論であり、漸近的対称性が一致する解は他にもある。したがって、計量の摂動による解析が必要であり、これは現在研究中である。
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