研究概要 |
本研究では「多孔性金属錯体」の設計性の高さに着目し、細孔内に機能性部位を導入することで細孔表面の性質を制御し、新機能の発現を目指す。細孔内に組み込む機能性部位として,豊富な化学機能を有する遷移金属イオンをターゲットとした。細孔壁面に金属イオンサイトを導入するために、金属イオン中心を有する架橋配位子を用いて骨格構築を行う。この手法は当グループによって提案された。しかしながら、上記のような金属錯体配位子は、溶解性が非常に低いものが多く、従来の溶液混合法では骨格を構築することが困難であった。本年度においては、この問題を克服するために、固相での混合による多孔性金属錯体の合成について検討を行った。はじめに、当グループの代表的な多孔性金属錯体であるCPL-1の原料3種(硝酸銅、ピラジン、ピラジンジカルボン酸ナトリウム塩)を、固体のままメノウ乳鉢中ですりつぶしながら混合することにより、溶液プロセスで合成されるCPL-1と同等の多孔性金属錯体が生成していることが確認された。ここには不純物(硝酸ナトリウム)も生成しているが、適当な溶媒で洗浄することにより、除去することができた。次に、ピラジンの代わりにTHFにしか溶けない錯体架橋配位子Cu(pyac)2を用いて同様の固相合成を行ったところ、同様に対応する多孔性金属錯体の生成が確認された。THFを用いずに錯体の合成に成功したことは注目に値する。以上のような、メカノケミカルな効果による多孔性錯体の合成についての研究例はいまだ数少ないが、溶媒量低減といったグリーンケミストリー的観点だけでなく、溶液プロセスで得られない新規化合物合成の可能性があり、その手法の発展が望まれる。
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