研究課題
特別研究員奨励費
多孔性金属錯体は遷移金属と有機架橋配位子によって形成されるフレームワーク内に細孔を有する結晶性の物質の総称であり、結晶性に由来する非常に均一な細孔を有し、高い空隙率と分子性材料特有の設計性、構造柔軟性を併せ持っている。従来の多孔性金属錯体の研究において着目されてこなかった相互作用として、本特別研究員は光のような外場存在下で、ホストーゲスト間に電荷移動相互作用が発現する系の構築を着想した。特に、吸着されたゲストが多孔性金属錯体のナノ細孔中で凝集・配列することにより、ホストーゲストによるナノ複合体が形成されるため、新たな光応答物質の合成手法となることが期待できる。本特別研究員はアントラセン誘導体と亜鉛イオンを用いて多孔性金属錯体を合成し、さらにホスト骨格のアントラセンがゲスト分子(アニリン誘導体)と光照射下で電荷移動相互作用を示すことを見出した。さらに、アントラセンの持つ比較的強い分子間相互作用を利用したアセチレン貯蔵材料への応用の可能性も検討し、成果を挙げた。また、光の透過の観点から、錯体結晶と光の相互作用において結晶の表面が重要な役割を果たすのは明らかである。しかしながら、多孔性金属錯体の分野において、結晶の表面状態を評価した例はほとんどなく、この分野ではいまだに一般的ではない評価手法を導入する必要があった。今年度はこれらの課題を克服するために、物質の表面・界面の状態を評価するコロイド界面化学の分野でトップレベルの成果を上げているアーヘン工科大学のMoeller教授のグループヘ赴任し、光応答性空間の開発において重要となる結晶表面と粒子サイズの制御に関する研究を行った。ここで得られた結果と、日本で得られた知見を融合することで、光応答性空間の構築に関する成果をあげることができた。
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