R.Hamiltonによって導入されたリッチ流と呼ばれる、多様体上のリーマン計量に対する発展型偏微分方程式が本研究の主対象である。G.Perelmanによる幾何化予想の解決にも用いられたリッチ流はリーマン幾何学における強力な手法の一つとして注目を集めた。Perelman以後の大きな結果の一つとして、閉多様体上の曲率作用素が正のリーマン計量を初期値とするリッチ流は適当な拡大リスケールの後、正定曲率計量に収束する、というBohm-Wilkingにする球面定理がある。この結果を受け、本研究において代表者は閉多様体上の第二種曲率作用素が正のリーマン計量を初期値とする。この結果はこれまでに知られている第二種曲率作用素が正の多様体に関する結果の全てをその系として含む。この結果は研究集会で発表した。 またリッチ流の研究と並行して、今年度はAlexandrov空間の幾何学の研究においても進展が見られた。Alexandrov空間の理論は幾何化予想の証明において、リッチ流とともに重要な役割を果たす。Alexandrov空間は距離の三角不等式の他に、その曲率がある定数以上であるという曲率条件を意味する幾つかの不等式を満たす。代表者はそれらの不等式の等号成立の場合について調べ剛性定理を証明した。さらにここで対象にしているAlexandrov空間は、従来の研究と違い、有限次元性や局所コンパクト性を仮定しておらず、剛性定理の証明においてそのような空間のこれまでに知られていない性質も明らかした。この結果については研究集会等で発表し、論文として投稿した。
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