研究概要 |
本研究の第一の目的は「タンパク質表面のアミノ酸残基の置換に着目することで、タンパク質表面での相互作用面の形成過程を探る」ことにある。昨年度に行った調査対象データの再構築を通じて得られた相互作用面形成過程の3分類のうち、本年度も引き続き「主に残基置換によるもの」に属する26ファミリーを中心に解析を進めた。 昨年度の結果より、タンパク質の相互作用面で特に寄与が大きいと考えられる部分(primary area)の形成過程には、2つのパターンがあることが明らかになっている。すなわち従来考えられていた「置換前から表面に露出していた残基が、より好ましい残基へと置換される」ケースの他、「タンパク質内部に埋もれていた好ましい残基が表面へと突き出し相互作用面に加わる」ケースである。 この残基の突き出しの影響をうけ、今年度行うはずであった「重ね合わせによる疑似複合体を用いた比較解析(あらかじめ本来の複合体とは別に、本来ならば単量体だが、同じファミリーの二量体をテンプレートとして重ね合わせで作った擬似二量体構造などを計算し、本来の複合体と比較する手法)」は、残基の突き出しの分だけ疑似複合体のサブユニット間に空間ができてしまい、うまく実行できないことが判明した。そこで、代替案として本研究室にて以前開発されたロータマーを加味した構造/配列適合性関数を用い、単量体と複合体との間に起こる各々の置換がどのように相互作用面、ひいては複合体の安定性に寄与しているかについての解析を行うこととした。この適合性関数を用いることで、本来個別に解析する予定であった疎水性度や相補性度といった各種のパラメータを一括して評価し、さらには残基一つ一つの置換の影響を定量化することができる。この解析の結果、相互作用に重要なごく限られた残基(ホットスポット)はprimary areaに多く、相互作用面全体に比べIle,Val,Tyr等への置換が多いといった傾向が得られた。
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