研究概要 |
酸化スレス性疾患モデル動物での高感度分子イメージングの構築のため、本年度は、前年度までに開発したニトロキシルラジカルを、疾患モデル動物へと応用することを目的とした。疾患モデル動物としては、未だ原因不明である潰瘍性大腸炎モデル(DSSモデル)を選択した。大腸炎患者において生体内抗酸化物質量が減少していることや、モデル動物において抗酸化剤投与による病態改善効果が認められたことなどが報告されており、酸化ストレスの関与が強く示唆されている。前年度までの結果を踏まえ、合成したニトロキシルラジカルをDSS惹起大腸炎モデルマウスに投与し、肉眼的に病変をスコア化する手法やヘマトキシリン・エオジン染色による組織学的評価によって病態を評価した。その結果、TEMPOLと2,6位にピランを導入した化合物においては、病態悪化作用が認められ、2,6位にエチル基を導入した化合物においては病態改善作用が認められた。これら化合物においては、アスコルビン酸との反応性が大きく異なるため、血漿中のアスコルビン酸濃度を測定した。その結果、アスコルビン酸高反応性であり、病態悪化作用を有する化合物を投与した群のみで、有意なアスコルビン酸濃度の減少が認められた。そこで、病態抑制効果を有する2,6位にエチル基を置換した化合物と、非膜透過性であり、病態に対して効果が認められていないcarboxy-PROXYLを用いてOMRI画像解析を行ったところ、エチル基を置換した化合物のみで、有意に画像輝度の減衰速度が亢進した。エチル基を導入したニトロキシルラジカルはアスコルビン酸との反応性が非常に低く、脂溶性も高いため、従来のものと比較して細胞内や脂質膜中における活性酸素を効率よく捉えることができると考えられる。そのため、本研究は、今後の新規化合物開発の方向性を示すと共に他の疾患モデルへの応用展開が可能となると確信している。
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