研究概要 |
大脳の高次機能の中で論理的判断および美的判断の中枢の局在を明らかにすることを目標とした。近年の脳画像研究では、こうした判断を行っているときの脳神経活動が主に機能的MRIを用いて検討されてきた。しかし、先行研究はいずれも機能的MRIしか用いておらず、時間分解能などの点で不明な点が多い。論理的思考の神経相関を調べた研究では、ロンドン大学神経科学研究所のGoelらのグループが、三段論法の課題を遂行に関わる脳部位の同定(Goel et al.,2000;Goel&Dolan,2001)、信念バイアスの影響(Goel&Dolan,2003)、演繹的推論と帰納的推論に関わる脳部位の違い(Goel&Dolan,2004)などについて研究を行っている。また、美的判断についてはKawabata&Zeki(2004)が、眼窩前頭前野、前帯状皮質、運動野などヒトの感性情報処理に関わる脳部位の同定を行っている。本研究では、機能的MRIに加えて、脳磁図(MEG)や経頭蓋磁気刺激装置(TMS)を用いて、より詳細な分析を行うことを目的とした。20-30歳台の若年健常人を対象とした。論理的判断の中枢に関する研究で成果が見られた。三段論法解決時に大脳皮質運動野に単発経頭蓋磁気刺激を与えることにより、演繹的推論時における両側大脳皮質運動野の興奮性変化を調べた。PET、機能的MRIを用いた研究では、演繹的推論時には両側頭頂葉、後頭葉および左外側側頭葉、前頭前野の大脳皮質活性化が報告されているが、本研究では演繹的推論時には右大脳皮質運動野の興奮性が増加し、左大脳皮質運動野の興奮性は変化しない傾向がみられた。
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