研究概要 |
研究課題は「近代日本の台湾統治と沖縄」であるが,この課題に沿って平成8年度は「日本統治下の同化政策と沖縄の歴史体験」,平成9年度は「日本統治下の民衆意識と沖縄の台湾認識」を解明するため,それぞれ現地調査と資料調査収集に当たった。平成8年度は,7月30日から8月27日まで,台北基隆における文献調査,資料収集,関係者とのインタビューを実施した。平成9年度は,7月26日から8月16日,12月19日から12月26日まで,台北,花蓮,台東における調査を実施した。この間に収集した関係文献及び資料はおよそ1500点に達し,その大半はすでに整理され,有効に活用できる段階にある。インタビューについては現在整理中であり,今後文献資料とともに有益な示唆をもたらすものとなろう。本研究によって得られた新たな知見は少なくない。 1.調査研究で収集された膨大な文献資料の解読を通して,日本統治下の台湾における同化政策の実態がこれまでの研究以上に明らかになったこと。これまでの研究は主に上からの統治政策を分析することに限定される傾向にあるが,本研究ではむしろ被治者である台湾側の同化政策への対応を解明することにより,同化政策の実態解明へと迫った。 2.思想・文学・地理・歴史・言語などの各分野にわたる同化政策の実態分析が可能となり,各分野の相互の関連が解明されつつある。とりわけ,この分野ではこれまで全く使用されなかった小中学校教材を含む原資料を分析し,相互間の関連分析に重点をおいた。 3.台北,基隆,花蓮,台東などにおける一般市民・元官吏・文学者等の聞き取り調査を通して,日本統治時代の台湾における同化政策の実態と,同時期の台湾における沖縄県出身者の地位と役割が明らかになり,双方の同化政策の関連性が明らかになるとともに,今後の比較研究の基礎となる資料がかなり整理された。
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