アフリカ類人猿の共生・共進化に関する比較研究

• 研究課題/領域番号: 08041146
• 研究種目: 国際学術研究
• 配分区分: 補助金
• 応募区分: 学術調査
• 研究分野: 人類学(含生理人類学)
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 山極 壽一 (山極 寿一) 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (60166600)
• 研究分担者: KANYUNYI Bas コンゴ民主共和国中央科学研究所, 室長 ; NGOWOU Josep ガボン共和国森林省, 動物管理局, 研究員 ; 湯本 貴和 京都大学, 生態学研究センター, 助教授 (70192804) ; 黒田 末壽 (黒田 末寿) 滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (80153419) ; 西田 利貞 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (40011647) ; BASABOSE Kanyunyi D.R.Congo, CRSN,Dept.Mammalogy, Head Researcher ; KANYOCHYI Ba コンゴ民主共和国, 中央科学研究所, 部長 ; OVONO Simon ガボン共和国, 森林省, 研究員 ; FAY Michael WCS(アメリカ野生動物保護協会), ンドキ研究班, 代表者(研究職) ; BASABOSE Kan ザイール中央研究所, 哺乳類研究室, 室長(研究職) ; 浜田 譲 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (40172978)
• 研究期間 (年度): 1996 – 1998
• 研究課題ステータス: 完了 (1998年度)
• 配分額: 22,100千円 (直接経費: 22,100千円); 1998年度: 8,300千円 (直接経費: 8,300千円); 1997年度: 6,800千円 (直接経費: 6,800千円); 1996年度: 7,000千円 (直接経費: 7,000千円)
• キーワード: ゴリラ / チンパンジー / 熱帯雨林 / 共生 / 共進化 / 食物 / 巣 / 季節変化 / 食性 / 種間関係 / 採食 / 繁殖 / 山地林 / 低地林

研究概要

本研究は、アフリカ大陸の熱帯雨林の山地部と低地部(海岸林、内陸林)に同所的に共存しているゴリラとチンパンジーの食性、植生利用、集団編成、種間関係などを調査し、両種が互いの、また他の森林動物との採食競合をいかに解決して共存してきたかを解明することを目的として、平成8年度から継続して研究を実施してきた。本年度は調査の最終年度にあたるので、コンゴ民主共和国の中央科学研究所からBasabose A.Kanyunyi氏を招へいしてこれまでに収集した資料の分析をするとともに、ガボン共和国のプティ・ロアンゴ保護区でゴリラとチンパンジーの生態に関する資料を収集して分析を行った。その結果、山地林のカフジ・ビエガ国立公園ではゴリラとチンパンジーが季節によって異なる採食戦略や営巣樹選択を示すことが明らかになった。この山地林は低地林とは逆に、乾季になると果実の種数や量が増加する。この時期ゴリラは1日の遊動距離を伸ばして多くの果樹を訪問するのに対し、チンパンジーは特定の果樹に固執して狭い範囲を繰り返し利用する。また、チンパンジーはゴリラの食べる果樹には営巣しない傾向があり、これは営巣集団が小さいほど顕著であることが判明した。これらの結果はエネルギー価の高い果実をめぐって競合が生じないように、季節によって両種がニッチを分化させていることを強く示唆している。プティ・ロアンゴでは内陸部で果実の種数が減少する乾季に、海岸林でいくつかの果実種が大量に実り、これがチンパンジーの遊動に大きな影響を与えていることが示唆された。現在なお資料を分析中であるが、ゴリラやゾウなどとの食物や利用域の重複を検討しながら、類人猿の共存関係について考察していくつもりである。これまでに得られた結果は冊子体報告書にまとめたが、類人猿の共生と共進化について最初の実りある成果が得られたこと、今後とも調査の継続が望まれることを付記しておきたい。

研究成果

• [文献書誌] Hamada et al.: "Development of hand and wrist bones in chimpanzees" PRIMATES. 39(2). 157-169 (1998)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Momose et al.: "Pollination biology of a lowland dipterocarp forest I." AMERICAN J.BOTANY. 85(10). 1477-1501 (1998)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Nishida, T.: "Deceptive tactic by an adult male chimpanzee to snuatch a dead infant from its mother" PAN AFRICA NEWS. 5. 13-15 (1998)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Takenoshita et al.: "Branch-drop display of a female chimpanzee of petit Loango, Gabon" PAN AFRICA NEWS. 5. 15-16 (1998)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Yamagiwa, J.: "Socioecological factors influencing popuation structure of gorillas and chimpanzees" PRIMATES. 40(1). 87-104 (1999)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 山極 壽一: "食のホミニゼーション" 行動科学. 36. 25-31 (1999)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 西田利貞・上原重男: "霊長類学を学ぶ人のために" 世界思想社, 376 (1999)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 山極 壽一: "ゴリラ雑学ノート" ダイヤモンド社, 226 (1998)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Takenosita Y,Yamagiwa J & Nishida T.: "Branch-drop display of a female chimpanzee (Pan troglodytestroglodytes) o fPetit Loango, Gabon." Pan Africa News. 5. 15-16 (1998)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Yamagiwa, J: "An ossified chimpanzee found in a tree nest." Pan Africa News. 5 (2). 17-18 (1998)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Yamagiwa, J: "Socioecological factors influencing population stucture of gorillas and chimpanzees." Primates. 40. 87-104 (1999)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Yamagiwa, J.: "Hominization process in foraging strategies." Behavioral Science Research. 36. 25-31 (1997)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Hamada et al: "Development of the hand and wrist bones in]chinpangees" PRIMATES. 39(2). 157-169 (1998)
• [文献書誌] Momose et al.: "Pollination biology of a loeland digterocarp forest1" AMERICAN J.BOTANY. 84(10). 1477-1501 (1998)
• [文献書誌] Nishida T.: "Deceptive tacticby an adult wale chinpanzee to snatch adesd infort from its mother" Pan Africa News. 5. 13-15 (1998)
• [文献書誌] Takenoshita et al: "Branch-drop display of Female chinpangee of Petit Loango,Gabon" Pan Africa News. 5. 15-16 (1998)
• [文献書誌] Yamagiwa J.: "Socioecological factors influercing Population structive of gorillas and]chinpangees" PRIMATES. 40(1). 87-104 (1999)
• [文献書誌] 山極壽一: "食のホミニゼーション" 行動科学. 36. 25-31 (1999)
• [文献書誌] 西田利貞・上原重男: "霊長類学を学ぶ人のために" 世界思想社, 376 (1999)
• [文献書誌] 山極壽一: "ゴリラ雑学ノート" ダイヤモンド社, 226 (1999)
• [文献書誌] Basabose, K.& Yamagiwa, J.: "Predation on mammals by chimpanzees in the montareforest of Kahuzi,Zaire" Primates. 38. 45-55 (1997)
• [文献書誌] 山極 寿一: "ホミニゼーションと共生" 霊長類研究. 13. 117-120 (1997)
• [文献書誌] Yamagiwa, J.: "Mushamuka's story:the longest tennre and the largest group" Gorilla Journal. 15. 7-9 (1997)
• [文献書誌] 黒田 末寿: "ホミニゼーション直前の飛躍-チンパンジー属の食物分配に再評価-" 霊長類研究. 13. 149-160 (1997)
• [文献書誌] 山極 寿一: "父という余分なもの" 新書館, 269 (1997)
• [文献書誌] 山極 寿一: "ゴリラ雑学ノート" ダイヤモンド社, 226 (1998)
• [文献書誌] Nishihara T & Fay M.: "The present progress of primatological research and conservation activities in the Nouable-Ndoki National Park." Primate Eye. 59. 26-39 (1996)
• [文献書誌] Yamagiwa J.,Maruhashi T.,Yumoto T.& Mwanza N.: "Dietary and ranging overlap in sympatric gorillas and chimpanzees in Kahuzi-Biega National Park,Zaire." Greart Ape Societies,W.C.McGrew,L.F.Marchant & T.Nishida(eds.),Cambridge University Press,Cambridge. 82-98 (1996)
• [文献書誌] Yamagiwa J.,Angoue-Ovono S.& Kasisi R.: "Densities of ape's food trees and primates in the Petit Loango Reserve.gabon." African study Monographs. 16. 181-193 (1996)
• [文献書誌] Yamagiwa J.,Kaleme K.,Mwanga,M.& Basabose K.: "Food density and ranging patterns of gorillas and chimpanzees in the Kahuzi-Biega National Park,Zaire" Toropics. 6. 65-77 (1996)
• [文献書誌] Basabose K.& Yamagiwa J.: "Predation on mammals by chimpanzees in the montane forest of Kahuzi,Zaire." Primates. 38. 45-55 (1997)
• [文献書誌] 山極 寿一: "食物をめぐる競合と人類の進化-ゴリラとチンパンジーの食性の比較から-" 日本咀嚼学会誌. 6(1). 39-49 (1996)