研究概要 |
平成8年12月7日〜12月23日の間,オランダの国立自然史博物館,イギリスの大英自然史博物館ならびにケンブリッジ大学を訪問し,戦前に採取された東南アジアの後期更新世から完新世(近世も含む)に至るまでの古人骨資料について,形質人類学的研究をおこなった。目的は,先史東南アジアの古モンゴロイド集団の系譜と現代に至るまでの進化・拡散のプロセスを具体的に明らかにすることである。 調査対象となった古人骨資料は,オランダ自然史博物館では,ジャワ,フローレス,セレベス島から出土した中石器ないし新石器時代人骨である。大英自然史博物館では,セレベスの歴史時代人骨,マレーシアの中石器時代人骨,サラワクの近世人骨,ミャンマーの歴史時代人骨,またケンブリッジ大学では,ジャワ島,チモール島,レッサー・スンダ列島の近世人骨およびボルネオ・ニア洞窟出土の中石器時代人骨,アンダマン諸島の歴史時代人骨,ミャンマーの歴史時代人骨,マレーシアの中石器時代人骨について,頭骨および歯の計測的・非計測的形質のデータを採取した。 これらの人骨から得られたデータをもとにコンピュータを用いて多変量解析を含む統計学的分析をおこなった。その結果,いくつかの人骨に,先史東南アジアには中石器時代以前には,オーストラロ/メラネソイドが広く居住していたという仮説を支持する形態学的痕跡をみいだすことが可能であった。
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