研究課題
国際学術研究
年間降雨量が可能蒸発量より遥かに少ない熱帯乾燥地域での地下水涵養機構を探るため、平成7年度の国際学術研究(課題名:アラブ首長国連邦(UAE)における地下水涵養機構とその開発・利用に関する研究)を平成8年3月に実施した。この時全国200箇所を越す井戸水が採取され、一般水質、酸素と水素の安定同位体、水素の放射性同位体が分析された。偶然その直後に同国では極めて希な大降雨が全国的規模でもたらされた。乾燥地域ではこのような時に地下水涵養がまとまって行われると云われているが、これまでに深く追求された例はない。大規模降雨による浸透水は既存の地下水と混合して地下水質を変化させることが予測されることから、これを地下水涵養機構を探る絶好の機会と捉え、本研究を企画し、実施した。調査は同国の雨期をねらって平成9年3月1日から同30日にかけて行われた。前年度に実施した井戸からの採水、電気伝導度、pHの現場測定、ワジ堆積物による洪水履歴調査、人工洪水実験、人工降雨実験等を実施し、本研究課題の解明を期した。研究期間の関係から、試料の分析は現地でできたものの他はまだ終了していないが、当初狙っていたように、大降雨がもたらされたことによって、明らかに水質変化が生じていることが明らかとなった。その中には予想に反する結果も示されている。例えば地下水の電気伝導度の上昇などがそれである。最終報告では上記に係わる事実に加えて、衛星画像のグランドトル-ス調査から得た地下水涵養域や流動域などの水文地形上の新たな知見も述べられている。