研究課題
国際学術研究
1.1996年8月から9月に亘って、ノルウェー北方、北緯80度に位置するスバルバ-ル群島に滞在し、ノルウェー人研究者およびハンターの協力を得て、スバルバ-ルトナカイ、ワモンアザラシ、ヒゲアザラシ、シロカモメ、ウミガラス、ニシツノメドリを捕獲し、新鮮各器官(肝臓、腎臓、脾臓、肺、小腸、皮膚)を得た。スバルバ-ル大学機構内に設置した凍結ミクロトームと蛍光顕微鏡によって、各器官のビタミンA自家蛍光を観察し、同時に塩化金反応によって、ビタミンAの各器官内分布を解析した。この結果、北極圏動物および鳥類は生理的条件下でも肝臓星細胞に大量のビタミンAを貯蔵していることが明らかになった。さらに、肝臓以外の器官においてはその貯蔵量はきわめて少量であり、肝臓からビタミンAがあふれ出す、いわゆる過剰状態にはないことも解明された。2.ラットにおけるビタミンA投与実験では、北極圏動物と異なり、生理的条件下でも肝臓のみでなく、小腸、肺、脾臓にもビタミンAを貯蔵する細胞が発見された。とくに小腸のビタミンA貯蔵細胞は粘膜固有層にあって、小腸吸収上皮から吸収されたビタミンAの一部を貯蔵することが見い出された。すなわち、小腸で吸収されたビタミンAはすべてが直ちにリンパ管(中心乳び管)に移送されるのではなく、一部はこれらの貯蔵細胞系に貯えられることが明かになった。3.電子顕微鏡による解析では北極圏動物の肝臓星細胞ではビタミンAは細胞質中の単一または2-3個の大きな脂質滴に貯蔵されていたが、鳥類では小型で多数の脂質滴の中に貯蔵されていた。4.現在オスロ大学医学部でビタミンAの定量、レチノイド結合蛋白質の解析を行なっており、将来白血病をはじめとする癌治療への応用展開を進めている。
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