研究概要 |
妊娠8日のマウス胎児に50ミリグレイのX線を照射したところ,熱ショック蛋白質HSP27,HSP47,HSP71とも4時間後に検出され,8時間後には劇的に増加した.またc-Fos,Ras蛋白,Proliferating Cell Nuclear Antigen(PCNA)も同様に4時間後から検出され,8時間後には劇的に増加した.X線によって細胞分裂がG2期で停止し,4時間後には回復して放射線抵抗性のS期に入りかかったと考えられる.この時の妊娠母体に0.5または1グレイのX線を照射して,胎児の外表奇形を0.5および0.55グレイ,または1および1.05グレイ単回照射群と比較したが,X線抵抗性は観察されず,分割照射の方が単回照射より奇形の発現頻度が高かった.細胞死は主に神経外胚葉に観察され,中胚葉と内胚葉は放射線抵抗性であった.HSP27は細胞死にともなう修復機転に周囲の細胞に誘導されることが示唆された. いっぽうラット胎児を培養液中で42°C10分間の熱ショック処理を行ったところ,hsp27とhsp71のmRNA量は,すべての細胞周期にある細胞で上昇し,hsp73とhsp90は後期S期の細胞で上昇が著しかった.更にストレスに応答して発現の変動する遺伝子を検索するため,熱ショック1時間後に抽出したRNAと,無処理の胎児より抽出したRNAから逆転写によりcDNAを得た.これをランダムプライマーを用いて増幅し比較することによって,20種類のcDNAについて塩基配列を決定し,ノーザンブロットによって確認したところ,確かに発現が抑制されるものをみつけた.
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