研究概要 |
バセドウ病は、TSH受容体を標的とする臓器特異的自己免疫疾患の一つである。その病因は多因子性と考えられており、今回、TSH受容体遺伝子について、それらの多型と疾患との連関を探り同病の遺伝子因子解明をめざした我々は平成8年度より、同遺伝子の存在する染色体14番のYACライブラリーを作製し、(CA)n反復配列を有するクローンを得た。この配列の多型を利用して日本人の自己免疫性甲状腺疾患患者におけるTSH受容体遺伝子と同疾患との関連を評価し、多型アリルと自己免疫性甲状腺疾患罹患性との関連を示唆するデータを得た。そこで、本年度は、この(CA)nと既報の(AT)nの2種類の多型マーカーを使用して、334名の日本人自己免疫性甲状腺疾患患者(AITD)(バセドウ病(G)180名、橋本病(H)99名、阻害型TBII陽性甲状腺機能低下症31名(BM)、同陰性特発性粘液水腫(IM)24名)についてassociation studyを行つた。(CA)n多型マーカーについては、113名の正常者に比し、前回と同様にアリル1の出現頻度の有意な増加が、AITD,G,BM,IM群において認められた。既知の(AT)n多型マーカーにおいても、アリル5と6の出現頻度の有意な増加が、それぞれAITD,G,H群とAITD,G,H,BM,IM群とで認められ、両マーカー間の関連も示唆された。2つのTSH受容体マイクロサテライトにおいて、あるアリルが日本人自己免疫性甲状腺疾患およびそのサブタイプに属する疾患の罹患感受性locusと関連していることが示唆された。このことは、TSH受容体が自己免疫性甲状腺疾患の病因遺伝子である可能性を示唆している。今後、同受容体遺伝子の変異の検索やCTLA-4を含めた他の遺伝子の検討、さらにはゲノムスクリーニングも行う予定である。
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